中国・東南アジア・インドの求人・求職者動向レポート 2016年4~6月期
株式会社リクルートホールディングス(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 兼 CEO:峰岸真澄)の100%子会社であり、アジアを中心に人材紹介事業を展開するRGF Hong Kong Limited(本社:香港、President:葛原孝司)は、このたび、2016年4~6月期の中国・東南アジア・インドにおける日系企業を中心とした求人・求職者の動向をまとめました。
※2016年12月9日追記:[参考:1現地通貨あたりの日本円(2016年6月末時点)]において誤りがあったため訂正しました。
(誤)インドネシアルピア:0.91円 → (正)インドネシアルピア0.01円
(誤)ベトナムドン:0.001円 → (正)ベトナムドン:0.01円
[参考:1現地通貨あたりの日本円(2016年6月末時点)]
中国人民元:15.76円、香港ドル:13.69円、インドルピー:1.68円、インドネシアルピア:0.01円、シンガポールドル:77.24円、タイバーツ:3.01円、ベトナムドン:0.01円
中華人民共和国(中国大陸)
現地化加速に伴い日本語能力不問の求人が増加。中国企業の日本人技術者採用ニーズも
当社で取り扱う中国の日系企業求人数トレンド
総経理
橘 宏喜 (たちばな ひろき)
- 中国経済減速を背景に、日系企業の慎重な採用姿勢は続いているが、日本語能力不問の求人は増加。①現地企業や他の外資系企業の開拓を進めているため日本語が必須ではない ②中国のWTO加盟前後(2000~2005年)に入社した日本語話者が管理職層となり、部下にあたる非日本語話者の採用・マネジメントをしやすくなっていることなどが背景にある。
- 日本人人材に対する求人案件と日本人求職者の需給バランスを都市別に見ると、北京・上海などの大都市ほど「買い手市場」。日本人求職者は、都市ごとの人材ニーズの傾向を把握したうえで、大都市以外にも目を向けると転職の可能性が広がりそうだ。
- 日本の製造業再編などを受け日本人技術者に対する現地企業のニーズも出てきている。
- 春節休暇明け、かつ、7月の賞与支給前のため、現地人求職者の動きは例年どおり落ち着いている。
○転職事例:品質管理(日本人人材)/日系・食品製造/40歳代前半/約170,000中国人民元(年収)
中華人民共和国(香港)
日系製造・商社などで中国大陸への機能移転が継続。サービス業では日本語話者獲得のチャンス
当社で取り扱う香港の日系企業求人数トレンド
ゼネラルマネージャー
高山典久(たかやま のりひさ)
- 大学新卒の就職活動が5月から徐々にスタート。また、例年活発な採用活動を行う金融業界で、大手企業のレイオフや事業縮小が相次いでいること、中国大陸からの観光客減少による小売市場縮小などにより、香港全体の求職者数は増加傾向。以前ほどの「売り手市場」ではなくなっている。
- 日系企業では、製造・商社などで深セン・広州への機能移転が継続。これらの企業で営業・マーケティング職に就いていた日本語話者の流動性が高まっており、日系サービス業(IT、広告、PR)にとっては日本語話者を獲得しやすい環境と言える。
- 香港の投資会社や製造業の日本人採用ニーズも少なからずある。製造業では中国大陸にある工場への出向者として生産管理や日系取引先向けの営業、投資会社では日本の不動産投資に関わる責任者や、日本株・国債のトレーダーなど。いずれも新規ポジション向け採用の問い合わせが増加している。
○転職事例:営業マネージャー(日本人人材)/英国系・メディア/20歳代後半/約800万円+コミッション(年収)
インド共和国
人材獲得競争が激しさを増すなか、現地採用→日本本社採用への切り替えを条件にした人材確保の動きも
当社で取り扱うインドの日系企業求人数トレンド
ジャパンデスクヘッド
森土卓磨(もりど たくま)
- 日系企業では年度初めにあたり、年間人員計画に基づく増員や、退職者の欠員補充を目的とした採用活動が活発。また、日系完成車メーカーを中心に、新工場・ライン開設に合わせて駐在員が増えており、通訳・翻訳を担う日本語話者のニーズが高まっている。日本語話者などの希少人材は獲得競争が激しく、日系企業の中でも、中小企業や市街地から離れた拠点を持つ企業の採用活動は難航。加えて日系中小製造業では、日本から派遣できる人材も不足しているため、将来的に日本の本社採用に切り替える条件などを提示し、必要なポジションの人材を現地法人で獲得しようとする動きも見られる。
- 今年初めの会社法改正で、一定期間経過後は、会計監査人(法人)を変更することが義務付けられた。これに伴い、現地および多国籍の会計監査法人から、日系企業向けの営業職として、日本人人材を採用したいという相談が多く寄せられている。
○転職事例:ゼネラルマネージャー(日本人人材)/日系・自動車部品メーカー/50歳代前半/約1,300万円 (年収)
インドネシア共和国
転職市場はラマダン前の落ち着きを見せる。日系企業の事業進展に伴い物流・コンサルで新たな採用ニーズあり
当社で取り扱うインドネシアの日系企業求人数トレンド
ディレクター
土肥幸之助(どい こうのすけ)
- インドネシアでは例年、断食期間(ラマダン)終了後のレバラン(断食明け大祭)に伴う手当支給後に転職者が増加するため、4-6月期は企業・求職者ともに動きは落ち着いている。
- 日系企業では、新年度の人員計画に基づく採用活動や、レバラン後の退職が決まっている従業員の欠員補充の動きがあった。業界別では、消費財製造業の事業拡大に伴い、物流の求人が昨年に比べて増加。2014年頃までの進出ラッシュ時に拠点を構えた日系企業ではより複雑性の高い人事・会計課題に悩むケースが増えており、こうした企業を顧客に持つコンサルティング業で体制強化の動きがある。
- 経済成長率が鈍化するなか、現地人求職者のうち、特に中間管理職層では、内定を獲得しても現職に留まったり、受諾を引き伸ばしたりするなど保守的な傾向も見られる。
○転職事例:コーディネーター(日本人人材)/日系・会計コンサルティング/20歳代後半/約300万円 (年収)
シンガポール共和国
外国人就労ビザ発給厳格化の影響を受けつつも、上級管理職・専門職の日本人現地採用需要は拡大
当社で取り扱うシンガポールの日系企業求人数トレンド
デピュティーマネージングディレクター
岡部雅仁(おかべ まさひと)
- 外国人の就労ビザ発給条件厳格化の影響で、日系企業では、月給4,500シンガポールドル(約35万円)以下の若手層やアシスタント職の日本人人材採用は減速傾向。一方、年収800万~1,000万円の専門職・上級管理職は、駐在員から現地採用人材への置き換えが進み、即戦力となる日本人人材への需要が増加。
- 日系企業の動向を業界別に見ると、製造:東南アジア地域を統括する営業マネージャーポジションなどで即戦力人材の需用増加。建設:シンガポールの開発拡大に伴い、幅広いポジションで日本語話者の需要増加。金融:シンガポール政府方針を受け、特にコンプライアンス対応職種において、管理職以上で即戦力となる人材の採用が活発。コンサルティング・会計:日系企業の進出・M&A・JV案件増加に伴い、中小規模のアドバイザリーファームで、専門職かつ上級管理職人材への需用増加。IT:エンジニアの需要が引き続き高い。特に、日系金融機関向けの基幹システム導入やコンプライアンスシステム強化などの目的で、ITプロジェクトマネージャーの需用拡大。日系企業にインフラサポートを行う日本語話者のニーズも安定的にある。
○転職事例:リージョナルアシスタントセールスマネージャー(現地人材)/日系・製造業/40歳代後半/約80,600シンガポールドル(年収)
タイ王国
FA機器関連企業は採用ニーズ旺盛。日本語話者は「売り手市場」で給与上昇傾向
当社で取り扱うタイの日系企業求人数トレンド
ブランチマネージャー
八源寺誠(やげんじ まこと)
- タイ国内の自動車販売低調の影響が、さまざまな日系企業の採用活動に波及。製造業を中心に採用活動に慎重な動きが広がっている。同じ日系製造業の工場建設などを担う建設業は、新たな工場建設計画減少のため、バンコク市内のオフィス建築やインフラ整備事業にシフトする動きあり。
- 一方、工場の人件費抑制傾向を背景に、FA(ファクトリーオートメーション)機器の関連企業は好調で採用意欲旺盛。タイ内需の取込みに向け新規進出が続くサービス業(飲食、コンサル、IT等)では継続的な採用ニーズがある。IT関連業種は現地人エンジニアを中心に増員を進めているが、人材不足から獲得競争が激しい。
- ビジネスレベルの日本語能力を持つ現地人求職者の動きが活発。日系企業の需要も引き続き高く、給与水準は上昇傾向。転職によって、20%以上の給与アップを獲得する人材も多い。流動性が高いため、離職を防ぐためにも、採用の際には志望動機やキャリアプランの明確化を意識したコミュニケーションが重要。
○転職事例:セールスエンジニア(現地人材)/日系・製造(機械・設備)/20歳代後半/約400,000タイバーツ(年収)
ベトナム社会主義共和国
日系企業進出は大手で一巡し中小にも広がる。ベトナム内需獲得に向けた現地人材採用も増加
当社で取り扱うベトナムの日系企業求人数トレンド
ブランチマネージャー
細田裕子(ほそだ ゆうこ)
- 転職市場は引き続き活発な動きを見せている。業界別では、IT業界の人材不足が続き、経験に対して給与水準が高い傾向。国内や周辺国を結ぶ高速道路や橋梁などのインフラ整備に伴い、物流企業に加え、小売りの物流部門での採用も増え始めている。
- 日系企業の新規進出は、大手で一巡し中小企業に広がっている。当社ではこの数ヶ月、今年度の新規駐在員向けの通訳、アシスタントなどの募集が増加。
- 進出済み日系企業では、従来の日系企業との取引に加え、拡大するベトナム内需の獲得を視野に入れた動きが広がりつつある。現地企業向けの営業職や、教育業界での教師の募集も増加。
- 日本語能力を問わず英語のみで応募できる求人も増えている一方、能力・スキル以上に社風との相性を重視する日系企業も多い。
- 日系大手企業であってもベトナムでは知名度が低いことも。現地人求職者とのコミュニケーションでは、日本での採用活動以上に自社PRを丁寧に行う必要あり。
○転職事例:マネージャーアシスタント(現地人材)/日系・不動産/40歳代半ば/約348,000,000ベトナムドン(年収)
RGF HR Agent について
リクルートグループが展開する、アジアを中心とした人材紹介事業です。
日系企業の海外進出を人材採用面からサポートするべく、2006年に中国へ進出し、2009年にRGF(Recruit Global Family)ブランドを立ち上げました。現在、11の国と地域、26都市に展開し、日系企業のみならず多国籍企業や現地企業へのサービス提供を強化しています。
世界規模での人材流動化がより一層進むなかで、私たちは企業と個人のより良いマッチングを実現し、グローバルNo.1のHRソリューション企業となることを目指します。
日系人材紹介会社最大の拠点網:11の国と地域、26都市
日本、中国大陸、香港、台湾、シンガポール、インド、ベトナム、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ
幅広い人材層に対応:経営幹部から新卒採用まで
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